はじめに
文部科学省初等中等教育局特別支援教育課は令和8年3月26日、発達障害を含む特別な教育的支援を必要とする児童生徒への新年度対応について、教育委員会や学校設置者などに事務連絡を発出しました(令和8年3月26日-p.1)。
事務連絡では、新年度当初から校内支援体制を機能させ、新たに入学する児童生徒や進級する児童生徒を含め、必要な支援を確実に行うよう依頼しています(令和8年3月26日-p.1)。
特に重視しているのは、次の4点です。
- 本人・保護者への確実な情報提供
- 1人1台端末などのデジタル学習基盤の活用
- 校長のリーダーシップによる校内支援体制の構築
- 合理的配慮の提供や関係機関との連携
事務連絡は、都道府県・指定都市教育委員会のほか、私立学校、国立大学法人の附属学校などにも周知を求めています(令和8年3月26日-p.1)。
本人・保護者に伝えるべき5つの情報
事務連絡の別紙1では、学校から本人・保護者へ情報提供する際の5つのチェックポイントを示しています(学校から本人・保護者への確実な情報提供に向けた-p.4)。
1. 相談窓口、担当者、連絡手段
学習面や行動面の困難、発達に関する不安などを相談できる窓口を明確にします。あわせて、次の情報も伝えられるようにしておくことが重要です。
- 相談窓口の所在
- 特別支援教育コーディネーターや養護教諭などの担当者
- 相談・連絡の方法
- 電話やメールなどの連絡手段
保護者が相談先を見つけられない状態にならないよう、学校のWebサイト、学校だより、入学説明会などを通じて分かりやすく周知することが求められます(学校から本人・保護者への確実な情報提供に向けた-p.4)。
2. 学校の基本方針と校内支援体制
特別な教育的支援を必要とする児童生徒に対し、学校としてどのような方針で支援するのかを伝えます。情報提供の対象には、例えば次の内容が含まれます。
- 特別支援教育に関する学校の基本方針
- 校内委員会などの支援体制
- 支援を担当する教職員
- 学級担任や専門スタッフの役割分担
学校としての考え方や体制をあらかじめ共有することで、本人・保護者との相互理解を進めやすくなります(学校から本人・保護者への確実な情報提供に向けた-p.4)。
3. 個別的な支援の内容
学校や教育委員会が行っている個別的な支援についても、具体的に情報提供します。通級による指導に関する情報も含まれます。利用できる支援の内容や相談先を、本人・保護者が確認できるようにすることが重要です(学校から本人・保護者への確実な情報提供に向けた-p.4)。
ただし、通級による指導などの制度や利用条件は、地域や学校によって異なる場合があります。必要に応じて、学校から教育委員会などへの相談につなげます。
4. 教材やICT機器の活用方法
学校や教育委員会が用意している教材、ICT機器、その活用方法についても説明します。対象となるものには、次のようなものがあります。
- 1人1台端末のアクセシビリティ機能
- デジタル教科書
- 学習用アプリ
- その他の教材
- 音声教材
単に「端末を利用できる」と伝えるだけでなく、どのような困難さに対して、どの機能を活用できるのかを説明することが望まれます(学校から本人・保護者への確実な情報提供に向けた-p.4)。
5. 合理的配慮の提供プロセス
合理的配慮の提供に向けて、学校・学校設置者と本人・保護者がどのように話し合い、支援内容を検討するのかを伝えます。事務連絡では、本人・保護者との建設的な対話による合意形成を通じて、過重な負担とならない範囲で合理的配慮を提供するよう求めています(学校から本人・保護者への確実な情報提供に向けた-p.4)。学校が一方的に内容を決めるのではなく、本人・保護者から困りごとや希望を聞き取り、児童生徒の実態や学習環境を踏まえて支援方法を検討することがポイントです。
困難さに応じて1人1台端末を活用
文部科学省は、発達障害を含む特別な教育的支援を必要とする児童生徒にとって、デジタル学習基盤は学びの機会を保障するものだとしています(2 デジタル学習基盤の活用-p.2)。
また、自分に合う方法で学習を調整するためにも重要だとしています。一方、ICT機器の活用が十分に進んでいない学校もあるとして、さらなる取組の充実を求めています(2 デジタル学習基盤の活用-p.2)。
事務連絡では、アクセシビリティ機能の活用例として、次のような方法を挙げています。
| 困難さの例 | 活用が考えられる機能 |
| 読むことが難しい | 読み上げ機能、書き込み機能 |
| 書くことが難しい | 音声入力機能、タイピング |
| 聞くことが難しい | 自動字幕機能 |
| 見ることや資料の読み取りが難しい | 拡大機能、白黒反転機能、リフロー機能 |
ICTは、特定の機能を一律に使うことが目的ではありません。読む、書く、聞く、見るといった学習上・生活上の困難さを把握し、本人に合った方法を検討することが重要です。
なお、利用できる機能や操作方法は、端末の機種、OS、学校の設定などによって異なる場合があります。
通常の教科書で使われる文字や図形などを認識することが難しい児童生徒には、音声教材の活用も選択肢となります(2 デジタル学習基盤の活用-p.2)。
参考となる公的ウェブサイト
- 支援教材ポータル
障害の状態や特性に応じた教材、支援機器などの情報を掲載しています。 - 発達障害ナビポータル
発達障害に関する情報を掲載しており、本人・保護者も利用できます。 - 文部科学省「音声教材」
音声教材の概要、発行状況、提供に関するQ&Aなどを紹介しています。 - 文部科学省「StuDX Style」
デジタル学習基盤を活用した実践事例や、特別支援教育における活用例を掲載しています。
校長を中心に校内支援体制を構築
発達障害を含む特別な教育的支援を必要とする児童生徒は、特定の学級だけに在籍するとは限りません。事務連絡では、すべての学級に在籍している可能性を前提に、学校全体で支援体制を整えることが重要だとしています(発達障害を含む特別な教育的支援を要する子供たちへの支援に向けて-p.5)。
別紙2では、校内支援体制の構築に向けたポイントを、次の3つに整理しています。
- 組織対応
- 専門性向上
- 保護者・関係機関との連携
組織対応
校内委員会、特別支援教育コーディネーター、個別の教育支援計画・個別の指導計画が中心となります。
以下は、別紙2の内容をもとにした記事上の確認例です(校内委員会の設置と運営-p.6)。
- 校内委員会の定期開催や必要時の開催手順が明確になっているか
- 必要な担当者が校内委員会の構成員となっているか
- 特別支援教育コーディネーターが校務分掌に位置付けられているか
- コーディネーターの役割を学校として確認しているか
- 必要に応じて複数のコーディネーターを指名できるか
- コーディネーターが専業従事できるよう校務上の配慮を行えるか
個別の教育支援計画や個別の指導計画は、作成すること自体が目的ではありません。支援を実施し、評価し、必要に応じて改善するために活用します(発達障害を含む特別な教育的支援を要する子供たちへの支援に向けて-p.5)。
また、合理的配慮の内容を個別の教育支援計画に明記し、関係機関や進学先へ適切に引き継ぐことも示されています(発達障害を含む特別な教育的支援を要する子供たちへの支援に向けて-p.5)。
専門性向上
特別支援教育コーディネーターを中心に、校内研修を計画的に実施します。研修では、次のような内容が考えられます。
- 障害理解に関する教職員の理解啓発
- 教職員の意識改革
- 特別支援教育を担う教員の専門性向上
- 役割に応じた校外研修への参加
特別支援教育支援員、スクールカウンセラー、スクールソーシャルワーカー、医療的ケアを行う看護師などの専門スタッフとも連携します。児童生徒の実態、支援内容、担当者の役割分担について、個別の教育支援計画などを活用しながら学校内で共通理解を図ります(発達障害を含む特別な教育的支援を要する子供たちへの支援に向けて-p.5)。
保護者・関係機関との連携
家庭での様子や保護者の意向を支援に反映することも重視されています。学校だより、教育相談、PTAなどの機会を活用し、特別支援教育に関する理解を促します。また、特別支援学校のセンター的機能や、医療・保健・福祉・教育・労働などの関係機関も活用します(発達障害を含む特別な教育的支援を要する子供たちへの支援に向けて-p.5)。学校外の機関と連携する際は、特別支援教育コーディネーターを窓口として、連携方法を整理しておくことが重要です。
合理的配慮は対話と合意形成を通じて検討
障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律の改正により、令和6年度から、国公私立すべての学校で合理的配慮の提供が法的義務となっています(発達障害を含む特別な教育的支援を要する子供たちへの支援に向けて-p.5)。合理的配慮については、学校・学校設置者と本人・保護者が建設的に対話し、必要な配慮の内容や方法について合意形成を図ります。
記事上の整理として、基本的な流れは次のとおりです。
- 本人・保護者から困難さや希望を聞き取る
- 児童生徒の実態や学習環境を把握する
- 必要な支援や配慮の方法を話し合う
- 実施可能な内容について合意形成を図る
- 個別の教育支援計画などに記録する
- 実施後に評価し、必要に応じて改善する
合理的配慮は、最初に決めた内容を固定するものではありません。児童生徒の状況や学習環境の変化を踏まえ、継続的に見直すことが重要です。
進学時は支援情報を適切に引き継ぐ
進学に伴って学習環境や支援体制が変わるため、学校間の連携も重要です。
事務連絡では、次のような取組を示しています。
- 関係教職員による進学先の学校見学
- 本人・保護者による事前見学
- 入学者選抜前や入学前など適切な時期での情報整理
- 進学先へ引き継ぐ情報の整理
- 個別の教育支援計画などを活用した引継ぎ
- 高等学校側による選抜時の配慮に関する周知
情報を引き継ぐ際は、本人・保護者の意向を確認し、引き継ぐ情報の範囲を整理する必要があります。個人情報を慎重に管理し、誤解や学校への不信感が生じないよう説明することも重要です(発達障害を含む特別な教育的支援を要する子供たちへの支援に向けて-p.5)。
学校設置者・教育委員会の役割
学校設置者には、所管する学校が次の取組を進められるよう、必要な支援や指導・助言を行うことが求められています。
- 本人・保護者への情報提供
- デジタル学習基盤の活用
- 校内支援体制の構築
- 合理的配慮の提供
- 福祉などの関係機関との連携
都道府県教育委員会には、特別支援学校の専門的知見や経験を生かし、域内の小学校、中学校、高等学校などを支援するセンター的機能の充実も求められています(発達障害を含む特別な教育的支援を要する子供たちへの支援に向けて-p.5)。
また、事務連絡では、来年度以降に取組状況のフォローアップを実施する予定としています。現時点で、実施時期や方法などの詳細は示されていないため、今後の文部科学省からの情報を確認する必要があります(令和8年3月26日-p.1)。
新年度前に学校が確認したい項目
以下は、事務連絡の別紙1・別紙2をもとにした、記事上の確認例です(学校から本人・保護者への確実な情報提供に向けた-p.4)(発達障害を含む特別な教育的支援を要する子供たちへの支援に向けて-p.5)(校内委員会の設置と運営-p.6)。
本人・保護者への情報提供
- 相談窓口、担当者、連絡手段を周知できる
- 学校の基本方針と校内支援体制を説明できる
- 個別的な支援や通級による指導の情報を提供できる
- 教材やICT機器の活用方法を説明できる
- 合理的配慮の相談・合意形成のプロセスを説明できる
校内支援体制
- 校内委員会の開催手順が明確になっている
- 特別支援教育コーディネーターが校務分掌に位置付けられている
- 個別の教育支援計画・個別の指導計画を活用できる
- 校内研修の計画がある
- 支援員や専門スタッフとの役割分担が整理されている
- 保護者や関係機関との連携窓口が明確になっている
- 進学時の情報引継ぎと個人情報管理の方法を確認している
まとめ
文部科学省は令和8年3月26日付の事務連絡で、発達障害を含む特別な教育的支援を必要とする児童生徒への新年度対応を、教育委員会や学校設置者などに依頼しました(令和8年3月26日-p.1)。
学校に求められている主な対応は、次のとおりです。
- 入学・進級時に、本人・保護者へ支援情報を確実に伝える
- 児童生徒の困難さに応じて、端末や音声教材を活用する
- 校長のリーダーシップの下、学校全体で支援体制を整える
- 本人・保護者との建設的な対話を通じて合理的配慮を検討する
- 関係機関や進学先と必要な情報を適切に共有する
新年度の準備にあたっては、事務連絡の元資料に掲載された、本人・保護者への情報提供に関する5つのチェックポイントと、校内教育支援体制構築のポイントを活用し、自校の取組状況を確認するとよいでしょう。

